教育で一番大切なものを教えてくれた宮城まり子さん

 コロナ禍に入りかけた2020年3月21日、歌手・女優・慈善活動家(福祉事業家)宮城まり子さんが亡くなられました。奇しくもお誕生日。93歳というご高齢だったというものの、本当に残念でした。Wikipediaでは「人気女優であり、NHK紅白歌合戦に8回も出場した人気歌手でありながら、芸能活動を事実上やめ、日本初の民間社会福祉施設である、社会福祉法人ねむの木福祉会の理事長、静岡県掛川市にある学校法人ねむの木学園の理事長、ねむの木養護学校の校長、特別支援学校ねむの木の校長などを歴任した」とあります。

 教育を志していた学生時代、そのねむの木学園の肢体不自由の生徒さんたちが描く、サインペンによる絵画を見て、強く心を打たれました。障害を持っている子供たちから、これほどの内面的に深い絵を描く力を引き出せる秘密が知りたくて、ゼミの仲間と共にねむの木学園に見学に行きました。生徒さんたちが立ててくれたお茶を頂いたり、作ってくれた手巻き寿司をご馳走になったりしましたが、そのとき見させて頂いたまり子さんの音楽の授業は凄まじいものでした。
 障害のある身体のリハビリも兼ねて、楽器を叩かせたり、踊らせたりしようとまり子さんがリードをするのですが、全身から「あなたたちはそのままで素晴らしい」「あなたたちには出来る」「私はあなたたちを心の底から愛している」という想いが迸り出ます。その、まり子さんの心に応えて生徒さんたちが、動かない身体を必死に動かそうとします。少しでも出来ると、全身で歓びを爆発させます。

 見ていた僕らは泣けて泣けて仕方がありませんでした。
 人が人を信じ、愛することの凄さと、それは必ず相手に伝わるという絶対の信頼とを目の前で見せて頂き、教えて頂いたのだと思います。
 今、障害を持っているからと蔑んだりする風潮がますます強まっています。
 また、PCなどツールを充実させることこそが良い教育だという流れもあります。
 が、教育として一番大切なものは1人の人から1人の人へと伝わるものだということを、まり子さんは僕らに教えてくださいました。貴女は本当に聖なる方でした。

2023.6.9