世界196ヶ国中、9ヶ国。これ何かわかりますか?

『クラウゼヴィッツの暗号文』広瀬隆(新潮社)に加筆

 生徒たちにこの世界地図を見せて、「白」い国々にはどんな共通点があるだろうかと尋ねます。(注1)
 その国々はアイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、リベリア、スイス、ブータン、そして日本の9ヶ国です。
 最初は分からなくても、ヒントとして黒板に「1945年8月15日~」と書くと、勘のいい生徒は答えられます。そう、1945年8月15日以降、戦争をしていない国です。世界196か国中、わずか9か国です。

日本の戦後78年間

 もう一つ見てもらいます。
 1868年、江戸時代が終わり日本が近代国家への道を歩み始めようとしてから、今年(2023年)で155年たちました。
 そのうち、前半の77年間は、日本は戦争ばかりしていました。しかし、後半の78年間は全くしていません。
 これはなぜなのでしょうか?
 言うまでもなく、敗戦後制定した日本国憲法の「平和主義」によってですよね。

 戦後日本は、卓越した技術力をもって世界の先進国の仲間入りをしてきました。それはNASA(アメリカ航空宇宙局)をも驚かすほどのものでした。
 その技術力を(原則として)戦争に用いる武器・兵器を作るためには使わず、人々の生活の向上と安全のために使おうとしてきました。だからこそ、日本は世界から憧れを持たれ、尊敬されてきました。
 そして、東日本大震災後のボランティアや、近くはサッカー・ワールド・カップの試合後の日本人サポーターの清掃に見られるような、世界が驚く「利他の心」を日本人は当たり前に持っています。(注2)

 この3つの前提「卓越した技術力」「平和主義」「利他の心」を、揃って持っているのは世界の中では日本だけでしょう。
 この3つの前提を世界に伝え、それらを使って世界にある対立・紛争の融和的解決、経済至上主義が生む格差の縮小、その他の問題を引き起こす世界にはびこる自国中心主義・利他主義を超えていく潮流を創っていくことを、これからの日本は目指していくのはいかがでしょうか。

オスロ合意調印後に握手をするイスラエル・ラビン首相とPLOアラファト議長オスロ合意調印後に握手をするイスラエル・ラビン首相とPLOアラファト議長

 かつてスリランカ内戦が激しかった時、政府側・シンハリ人とゲリラ側・タミール人との間で秘密裡に平和交渉にあたったのが北欧のノルウェー政府でした。
 互いに憎しみあい、解決は困難と思われていた内戦の終結に双方が歩み寄ったのは、仲介者がアジア・アフリカを植民地支配したことのない、ノルウェーだったからこそだと言われています。
 パレスチナとイスラエルが歩み寄った1993年のオスロ合意の仲介も、双方と良好な関係を保っていたノルウェーでした。日本も今後、ずっと戦争をしない国であってほしいのはもちろん、さらにノルウェーのように世界の争いを仲裁し、中村哲さんのように人々の生活を立て直し、世界から紛争をなくし、人々の笑顔を取り戻す、その働きをする国になってほしいと思うのです。
 それこそが世界の中での日本が果たすべき役割・使命だと思います。(注3)

 2023年、日本のGDP(国内総生産)はドイツに抜かれて世界第4位になったそうです。でもGDPが世界第3位だとか、第4位になったとか、それ自体が大切なのではありません。
 大切なのは世界の中で日本が国としてどう歩んでいくのか、そのヴィジョンを持っているかどうかということですし、実は私たち一人ひとりもそのヴィジョンを持とうとすることによって、閉塞した自分から新しい自分へと一歩解き放たれていくようになるということも覚えておきたいと思うのです。

2023.10.27

(注1)『クラウゼヴィッツの暗号文』広瀬隆(新潮社)に加筆
(注2)当たり前すぎて日本人には話題にものぼらないこの心こそ、アフター・コロナの世界で注目されています。
ヨーロッパを代表する知性と言われるフランスの経済学者ジャック・アタリは「これからの世界は利他的になるべきだ」と言いました。
「パンデミックと言う深刻な危機に直面した今こそ『他者のために生きる』という人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきだ。利他主義という理想への転換こそが人類サバイバルのカギである。」(ETV特集『パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望』2020)
日本の気鋭の政治学者、中島岳志も『思いがけず利他』(ミシマ社 2021)や『「利他」とは何か』(集英社 2021)などの著作を次々と出しています。
(注3)すると当然、戦時中の日本が侵略した朝鮮半島、中国、東南アジア諸国とどう関係を再構築し、信頼を得ていくかが変わらぬ課題となるでしょう。