Across the Universe

 人間には、たとえ困難な状況にあっても、だからこそ困難な状況にある人たちを助けたいと思う心があります。
 たとえ重い「人生の条件」を背負っていても、それを背負っていたからこそ、同じような「条件」を背負った人を励まし、支えたいと願う心があります。

 そのことを映画やドラマ、あるいは音楽は教えてくれます。
 その映画・ドラマや音楽、その背後にある歴史が教えてくれる人間の生き方に感動し、自分もそう生きていきたいと思うとき、人は元気になります。自分にも、そう生きていきたいという「願い」があると気づいたとき、人は甦るのだと思います。  

 その体験を、世界の国々の中でも最も自己肯定感が低く、自分の中に人間として素晴らしい力が既にあり、未来は変えることが出来ると体験させてもらってこなかった日本の子どもたちに、させて上げたいと思って社会科の教師をやって来ました。
 その中で、感じてきたことを綴っていきたいと思っています。  

 ブログのタイトルは、ジョン・レノンのビートルズ時代の最後の名曲「アクロス・ザ・ユニヴァース」Across the Universe からお借りしました。
 ぼくら人間はこれからどこへ向かうべきなのか、ユニヴァースを越えて僕らに呼びかけ続けてくれている声に、いつも耳を澄ませていたいと願ってのことです。

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